2020年2月10日月曜日

「市川崑物語」


岩井俊二監督は、映画監督になろうとして一番多く観たのが市川崑の作品だという。
以前観た時にはそんなことは気にもとめなかったのに、
今度はマニアだったんだな、と考える。
最初から好きで、研究するうち、もっともっと好きになって、
のめりこんで、彼も有能なので、時が来ればすぐれもんの映画監督になる。
それでマニアということもなくなって、傾向の違うすぐれた映画監督になって。
それでも、月日のなんということもない節目に、ぽかんとなんの気もなく、
岩井俊二は市川崑のマニアだったころに、つい戻る、みたいなことだろうか。

全編、巨匠提供の写真と、映画と、市川崑の[話し」のキリバリ。

そんな、市川崑監督まがいの、まがいものじゃなく、市川崑仕様を採用した
おもしろくて、目が離せない映画だった。息苦しいみたいに華麗な。
本物の市川崑が画面に少し映っているから、・・まだ巨匠は生きていたんだ。
ウソだと誰にでもわかってしまう「市川崑物語」など初手から論外で。
そうかといって、 岩井俊二の眼力であんまり、言いたい話をすれば、
市川崑なんか、すごく怒り方が怖そうで、恐ろしい。
そんな大物に迫る撮影。無音のカメラ。
自由なようで不自由な「市川崑物語」は、
市川崑の映画をもう一度、いや、たびたび見たいと、思わせる。