2020年2月4日火曜日

けばい娘 ⑴


私の友人の娘は、装束、化粧が、すごくケバイ。
何年かに一度しか会わないけれど、姉に会っても、妹を見ても、すごいと思う。
むかしからそうで、いまだって会うと、 ギクリとする。
いったい幾つになったのだろう? オオカミ仕様だから見当がつかない。

お姉ちゃんは、きれいな娘さんになり、結婚し、家を建て。
それから就職先の会社上司の病的なセクハラ侮辱に対し、法的処罰を求めた。
つまり何年振りかでこの姉妹に会えたのは、横浜地裁でだった。
裁判所である。原告である。訴えられたんじゃなくて、訴えたのである。

開廷後、少し遅れて、妹がお姉ちゃんの応援に入ってきて、最前列に腰かけた。
目が吊り上がった青いような黒いようなアイシャドウ。乱髪にしてある染め髪。
ぼーい・フレンド?がいっしょだ。「ふたり会社」の相棒、温厚そうな若者である。
妹のほうが彼よりも、暗黒版・堀 辰雄の詩みたい。
・・・西洋人はヒマワリよりも背がたかい。
もとから長身の上に、転びそうに踵の高いブーツをガンっと穿いているからだ。

お姉ちゃんとこの妹と、どっちが、ケバイか。
お姉ちゃんは原告だからか、リクルートスーツ?を着ているが、
しかし、見れば化粧はもちろん黒いスーツも、なんかこうケバイわけで。
スーツにはなんの罪もなかろうから、着方にどことなくコツがあるのだ。

妹が仏頂面で、原告席の、すでに着席している姉を、突っついている。
遅れてごめんねと言ったのかと思えば、あとで話してもらったけど、
「妹ですか? 手抜きしないで化粧したか、ときいたんですよ、アハハハ」
被告、双方の弁護士、裁判官たちが、所定の位置にもういたのに!

母親はどうしていたか?
彼女だってもちろん傍聴席でお手上げである。
内容をきかされているから、もろ手をあげて応援しているんだけど、
裁判官がなんと思うかと、ケバさに気をとられちゃって、こわばった無表情。

私はこの姉と妹をずっと贔屓(ひいき)している。別々の理由で二人が好き。
どんな時でも彼女たちの人間力に、論理性に、運命に肩入れしたい。
いま現在それが、どんなにトッ散らかって見えようと、・・・。
しかし、まあ、なんでこうも派手なんだろう?