2020年2月29日土曜日

痛い治療


大学病院の、眼科でレーザー光線の治療を受けている。
「麻酔液を4回注入しますから」、と看護士さんが言う。
前回と同じ感じのよい中年の女性だ。
「回数は4回ですか?」
私は用心して確かめる。どうしてか。
前回、もう1回来ると彼女が言ったのに、麻酔3回で治療が始まったからだ。
そのせいだと私は思ったが、前回は痛い治療だった。
「ええ、4回ですよ」
確かに今回は、4回、麻酔液が目に注入された。それでも非常に痛かったから、
この治療では、麻酔液は、それ程あてにならないのかもしれない。
あんまり痛いので、努力しても、つい額を定点からずらしてしまう。
途中、医師の手で固定していた小さなゴムの黒枠つきレンズが、吹っ飛んだ。
「気をつけてください」「気をつけて」
そういって彼は不機嫌に足元を探す。 なかなか見つからない。
このレンズを、医師は自分の指で、私の治療する側の目に、固定していた。
彼の言葉でいえば、そのうえで光線を「ヒットさせる」のである。
もちろん患者は、痛くても顔を動かさないように注意しないといけない。
「気をつけて。気をつけないとレンズが当たって、失明する場合がありますから」
この人は非常に不機嫌だけれど、
気をつけるべきなのは、患者だけだろうか。
医者が2本の指で、患者の目にレンズを固定させながら行う治療である。
今回の失敗をすべて患者のせいにするってどうなんだろう。
前回この人は、麻酔の回数にまったく無関心だった。
 
要するに、患者の痛さになんの関心も持たない医者なのだと思う。
痛みが、まるで存在しないように扱うから、痛みは増すのだ。