2020年4月16日木曜日

あこがれ


私のもっているどの詩集のなかにも、丸山薫という詩人の名はなかった。
こんな世の中になって、思いつくままに、おそろしい未来を考える時、
鶴部(つるべ)という名の、 
「いっさう高い山ふところに在る」村についての描写になぜかあこがれる。


星夜には十里彼方の盆地に瞬く       
山形市の灯が見えるといふ
天童町の灯も望めるといふ         瞬く(またたく)
吹雪はここよりさらに激しく
雪はここよりもはるかに深くつもる


都会に育って、本に埋もれて現実感のない生活をした。
激しい吹雪にも深くつもる雪にも、ほとんど縁がなかった。
劇団で旅公演に明け暮れていたころ、山形市にも立ち寄ったのだろうに。
ひとところに居て、純粋にただもう孤独でいるという経験が、
自分にまったくなかったのが今となっては残念である。