2020年4月16日木曜日

幸福だった11月


去年の11月、朗読サークルの発表会を、駅から近い小ホールで開催した。
居心地のよい50席ばかりの部屋を飾って、椅子も10脚は追加に持ち込んで。
みんな病後だし、どうしようかと躊躇した末の決心が、今はとても懐かしい。
やりましょうと決めてからの練習は、仕事のあいまに駆けてきてやるのだから、
みんな一生懸命、顔色がかわっていたと、それだって思い出すと楽しい。

プログラムを、大橋Mr.が、思いがけなくもサッと作って、
それをある日、私は大橋家のステキな食堂で渡してもらったんだけど、
葉書大の白地に文字だけのこれが、もう気に入っちゃって本当に幸福だった。
黒い文字の、会場のみなさんにお配りしたご案内は こうである。

               プログラム  
                     
         へんな子がいっぱい    灰谷健次郎
         小さな駅の待合室     石川栄一
         虫の話・イモムシ    
            ハンドブック    ブックトーク
         ぐりとぐらのえんそく   中川李枝子
         ラン・パン・パン     インド民話
                 休憩
         字のない葉書        向田邦子
         憲法と若者
         くらかけ山の雪       宮沢賢治
         「町角のジム」「生命は」   吉野弘


私たちはなんて一生懸命だったんだろう!
みんなは私の家でも、病後すぐで出演できない萱野さんの家でも、
たまたま萱野家にお見舞いにきてくれた人の前でも練習した。

コロナのコの字もない11月だった。

あんなふうにこれからも生きられたら、と思う。
どんな時も、みんなで、幸福とはどんなことを指すのかをわすれずに。