2021年1月18日月曜日

トロッコでとことこ

トロッコでとことこ 野原を走るような一日。
後藤さんに朝、電話をかけてみる。
お元気ですか?
大丈夫ですか?
       お元気じゃないにきまっている
       大丈夫でもない
       だって88才なのだし、
このあいだは救急車を呼びたいのですが、と電話をくださった。
考えているんですがね、様子をみることにした方がいいんじゃないかってね。      こういう状態は3度目ですし。どういうことか自分でわかっているから。
       笑顔温顔の、ゆっくりした物言い。
       私は6年前に亡くなったこの方の
       奥様がだいすきだった。

後藤さんが私の家にいらっしゃって、お昼ご飯をということになった。

もうずーっと一人だからどうしようもなくて、ここんとこね。
後藤さんは、終始にこにこ。
ええ、胆石が痛くて祝日に病院へ。医者が誰も居ないから戻って来ました。
牧師さんがクルマで送ってくれて。さいわい石が出たからよかったですが、
あとで近所の病院に行ったら、ほっといちゃダメじゃないかと怒られた。
なぜかって、黄疸になってましたからね。

後藤さんって、クリスチャンだからかどうか、誰のせいにもしないのだ。
「だーって病院に行ったけどお医者さんがひとりもいなかったんでしょっ」
私がフンガイしても、 え? え? ええ、そうなんですよね。
片手を耳にあて、補聴器を落としてなくしたもんで、このあいだですけれど。
2万円もしたけど、ちょっと不便で。

                     春風駘蕩、とかってこういう、ことかしら。
                     野原を、ひらがなばっかりつかって、トロッコに乗って、
                     もうどこに着いてもかまわないというような会話体。

私たちは、亡くなった奥様の話や、ご夫婦の世界じゅうへの旅行のことや、
子ども時代の悪戦苦闘だとか、むかしの仕事場のことなど、などなど、など?を、
トロッコに乗り込んだ、とし寄りのクマのプーさんと、
すぐキーキーいうしっぽの長い布製チンパンジーみたいに、
もう平和に、とにかく縫いぐるみ的に、半分人間やめて。そうやって。
痛かったり、治りっこなかったりする病気とたたかったといいますか。
各自、じぶんらしく。

私は後藤さんが毎日忘れずもって歩いていらっしゃるチラシの、
アートパラダイスの会員にしていただいた。
アートとあそぶ日常。想像力こそ困難に立ち向かう最善の道。
自由参加・会員になりませんか。
きいてみたけど、アートは無理でもいいのですって。

後藤さんは出版社で70才まで働いていた人だ。
後藤さんは画家だ。
後藤さんの人格っていまアートとのみ、むかいあっている。
それでいいんだって。